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アナーキー


Interview by riddimonline

 avexに移籍、メジャーデビュー・アルバム『NEW YANKEE』と共に全国ツアー中のラッパー、ANARCHY(アナーキー)。現在、主役を務め、日本人ミュージシャンにアメリカ人監督が迫った作品としても貴重なドキュメンタリー映画、“DANCHI NO YUME”が出身の京都で公開中。作品は、東京では渋谷UPLINKで当初2週間の限定上映だったところ満席が続き、結果約1ヶ月半で一旦終了、12月の再上映が決まっている。
 『NEW YANKEE』に至るまで、フリーダウンロード1枚を含む4枚のアルバムをR-RATEDから投下し、確固たる礎と評価を築いてきたアナーキー。遡れば2006年、インディペンデントでのデビュー当初から実話ナックルズの表紙を飾り、週刊SPA!やプレイボーイグラビアに顔を出し、現在ネット上では約倍の値段で取引きされている自伝「痛みの作文」(ポプラ社)を出版するなど、ラッパーとして常に異例の注目を集めてきた。
 アナーキーの存在と言葉が人、社会を惹きつける核にあるのは何か。
 11月には東京、京都以外で初、福島県は福島市での3夜限定“DANCHI NO YUME”上映(7、8、13日)と、それに続くライブ(14日/club NEO)決定のタイミングで、話を聞いた。

●ついさっき沖縄から帰ってきたとのこと。

アナーキー(以下、ア):ライブで4日間、初めて那覇以外で石垣と座間味、本島入れて3つの島に行って。座間味にはコンビニも信号もないんでライブはなかったですが、石垣ではやりました。

●ライブで忙しい?

ア:日本中をまわるのは結構ずっと続けてるんですが、アルバムが出た後ってこともあって、目下ツアー中です。

●福島が“原発”とすると、沖縄は“基地”という問題を抱えている場所です。それを現地で垣間みたり、会話に出てきたり、そういうことは?

ア:いつものほうがそういうこと聞く気がして。今回は飛行機代が半分くらいになって観光客が増えて潤ってるとか、逆に良い話がいっぱいありました。石垣にも欧米人むっちゃいました。

●沖縄での反応はどうですか?

ア:那覇は何回か行って、パ−ティー・ピーポーも多いし普通に人も集まるんですが、石垣は、「実際オレのこと知ってるのいるのかな?」という感覚で行きました。特に大きなハコでやったわけじゃないけど、聴いてくれてる子もいて、「ああ、いんのや」って。

●言葉が届いている感覚、手応えは?

ア:ありました。環境は違えど、色んな問題抱えて、僕の歌ってることに自分を置き換えて聴いてくれたりしてるかな、と。

●自分の生い立ち、団地での生活から生まれた言葉をラップしていて、それが他の地域でどう共感を呼ぶのか、伝わるのか。

ア:今までは団地の奴らとか、「オレらみたいな環境で育った子とかに届けばいいな」ってつくってたんですが、今の意識ではそこだけじゃなく、もっと広い部分。例えば沖縄でそういう問題抱えている人とか、福島で結構逆境に立たされている人とかもいるじゃないですか。「もっと広い人たちに届ける曲をつくりたい」と思って、つくってます。昔と違うところはそこかもしれないです。

●もともとの地元についての曲でも、「ここが特に響いている」と感じる部分はありますか?

ア:ライブを観たらわかってくれるんじゃないかなって。言葉も大事ですが、“バイブス”じゃないですか。「ちょっとでも熱くさせられたらな」って。細かく、「どの言葉で」ってことはわからないんですが。

●恥ずかしくて自分で映画を観てないと聞きました。

ア:一度上映場所には行ったんですが、そこでは観れなかったです。でも後でDVDで一回観ました。

●アメリカ人の監督による「DANCHI NO YUME」ができたということは、国内のみならず、国外でも共感できる何かがあるからだと思います。皆、何に引き寄せられるのか、当事者として感じる部分は?

ア:今になったらできる部分あるっすね。あの当時は、映画になっていることが普通(の日常)だったじゃないですか。あの映画で描かれていることが世の中だと思ってたし、だから今、「そうか。ああいう環境で育ったのは、特別な部分もあったのかな」って。みんな、「現実じゃない」みたいにあの映画を観てるけど、自分にしてみれば普通過ぎて笑けるというか、「こんなん映画にしていいのかな?」みたいな感覚。だから、ちょっと恥ずかしいくらい。でもあそこから来て、あれがルーツなので、それを見せて、もっと曲に深みが増したりもすると思います。

●「DANCHI NO YUME」撮影当時の、2枚目を出す頃と今を比べると、生まれ育った環境を俯瞰できる感覚がある?

ア:でも、まだ外からは見れてないかもしれないです。仲間もみんなあの街にいるし、「何かを変えられたか?」って言ったら全然変えられてない。

●とはいえ、日本人ミュージシャンをそれが誰にせよ、海外の映画監督が撮った実例はないかと思います。

ア:オレも、「何で撮りたいんかな?」と思ったすもん。だって、日本語わからんし、ホンマの意味でラップもわからんじゃないですか。

●アメリカと日本の逆転現象が起きる時期、フェーズに来たのかもしれません。そして実際に映画ができ、それが東京、京都、そして次は福島で上映されるというのも、世界から見れば意味深いことかと思います。

ア:福島は今もグチャグチャなままなところあるんですよね。

●原発近くには警戒区域があるし、放射能の問題もあって、津波被害が今も放置されているところがあります。

ア:放射能があるってわかってて、皆さんそのまま住むことを選んでるんですよね。今は平気でも、後々色んなことが出てきたりして、しかもそれが差別になったりするって聞きます。そこでできることが何なのか、オレ、わからないんです。

●そういうことも突き詰めていくと、別のインタビューで仰っていた、「若者が投票に行かないといけない」というところに繋がっていくのかもしれません。

ア:まず、本当のことをちゃんと教えてあげて欲しいです。反原発運動の人なんかも言ってる、「ホンマのこと教えろ」って。でも国としては、それをやったらおかしくなってしまうんですよね。

●そういった社会的な意識、発言は、以前はなかったものですよね?

ア:オレらも含めて、若い奴は「大人で決めてる」、「そんなんちゃうやろ」とか、文句言ってることが多いじゃないですか。それが、「オレらが参加してないから勝手に上で決まるだけなんじゃないか」という考え方になってきて、オレらが色々言うようになって、それで若い連中が全員言うようになったら、それは聞かないと収まらなくなるわけじゃないですか。例えばそれは、デリ君がやってることもその一つだと思うし、一人一人がその気持ちになればもっとデカくなるし、どんだけ頑固なおっさんが上にいたとしても、そのパワーの方が絶対デカいじゃないですか。

●民主主義は多数決で、だとすれば、数では負けない。

ア:実際めっちゃ賢い大人が言ってることより、こんなアホなオレが言ってることの方が正しいこともいっぱいあると思うんですよ。でも、耳を貸さないわけじゃないですか。だったら「文句を言ってるだけよりは、参加した方がいいんちゃうかな」って。しかも、そういうことをラッパーが言ったらいいと思ったんです。それが一つの立候補じゃないけど、若い奴も、誰かわからんおっさんが言うよりオレが言った方が、「あ、そうやな」と思ってくれるやつもいるわけで。そういう歳にきたのかな。

●定番的な“avex移籍=セルアウト”という批判に加え、“社会的なことを言い出したアナーキー”に「変わった」とか、「いい子ちゃんになった」と言われることはある?

ア:陰で言われてるのかもしれないですけど、別に言われてもいいです。でも、それを「ダサい」と思う時点で、その考え方がおかしいと思う。「セルアウト」とか、言いたいだけでしょ(笑)。みんな売るために頑張ってるし、そのためだけにやってるわけじゃないけど、だから、何て言われても気にならないです。

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